風俗 契約

初心を忘れずに

うちの会社がSEOの分野にも参入することになった。
他社からスペシャリストを引き抜くという。
風俗店のHP自体のアクセス数を増やすことで集客・求人を広告と合わせてトータルにサポートするのだそうだ。

 

同時に俺は広告部門の責任者に昇進した。

 

会社の体制が変わることで独立することも考えなくはなかったが、「一匹狼」というタイプではないことも自覚している。
会社にとどまることにした。

 

少し社内での事務作業が増えることになるだろう。
だが俺がやらなければならないことに大した変化はない。

 

店に足しげく通って少しずつ人間関係をつくるだけだ。
今も昔も、また業種にかかわらず、営業はこれしかないと俺は思っている。
若いやつは多くの店にメールを一斉に送りつけて、いくつか新規の契約を取っていた。
だがそれは一度きりの契約がほとんどで、継続になることはない。

 

それは人間関係ができていないからだ。
メールのやりとりなんてスマホやパソコンの先に誰がいるのか相手の顔が見えないではないか。

 

それだともし反響が思わしくなかったときに、簡単に、そして非情に切られてしまう。
メールの相手に情などわくはずもない。
当然だ。

 

営業はまず相手を知ることから始まる。
相手が何に困っているのか、どんな不満を持っているのかわからなければ俺たち営業マンはなにもできない。

 

店のコンセプトに合わない女の子からの応募ばかり続いてうんざりしている求人担当者に、“求人広告を出しませんか?”とただメールしているだけではダメなのだ。

 

最初は断られるかも知れない。
店頭で追い払われて相手に会えないかも知れない。
でも通ううちに相手のガードもゆるくなってくる。

 

少しずつ距離を縮めるのだ。
そこに近道はない。
信頼関係を作らないと、長い付き合いはできない。

 

俺が最初に契約を取ったクライアントはまだ俺に電話してくれる。
いっとき店をただんでいたが、また再開したそうだ。
新しく載せた風俗求人サイトの機能の使い方を教えてくれ、と。

 

電話ではなかなか伝わらず、結局店にいくはめになる。
パソコンに弱く何度教えてもわかってもらえない。
時間がかかってやっと理解できると満面の笑顔で喜んでくれる。

 

「お互い年を取りましたね。」
「そうだな。」
「次はうちから掲載してくださいよ?」
「考えとく(笑)」

 

こんな一見無駄そうな時間もあとでちゃんと返ってくる。
大口の契約をしてくれたり、他の店を紹介してくれることもある。

 

そんなことを俺は何度も経験してきた。
またそれを繰り返していくだけだ。

 

俺は広告代理店で働いている。
風俗系の営業マンだ。
これからもずっと。