デリヘル 求人

昔話

俺の最初のクライアントはあるデリヘルだった。
そこのオーナーとの付き合いはもう長い。
知り合ったころは繁盛店だった。
在籍の女の子も多く、その出勤率も高かった。
それでもお茶を引くようなことはなかった。

 

当時は営業用と求人用の広告にかなりつぎ込んでいた。
ここと取り引きが決まった時、上司は上機嫌だった。
俺も手ごたえを感じ、この業界でやっていけると自信になった。

 

Webの広告が流行りだした頃だったと思う。
紙媒体は衰退していて虫の息だった。
その紙媒体を最後まで使っていたのが、そのデリヘルだったのである。

 

その後、紙媒体がどんどん廃刊したり、新聞の広告ページも狭くなっていった。
他の風俗店は紙媒体に見切りをつけ、Web広告へと出稿していく。
うちの会社も売り上げのほとんどがWebになっていった。

 

それでもそのオーナーは紙媒体にこだわった。
俺との商談でも、Web広告の話は露骨に嫌がった。
俺もクライアントの意に沿って紙の依頼ばかりを受け続けた。
だが掲載できるところがどんどん減っていく。
露出が減れば、問い合わせも減ってくる。
面接希望の電話も指名の電話もどんどん減っていった。

 

その店は今でもやっている。
あの頃と同じオーナーだ。

 

HPを見ると在籍数は当時の半分以下になってしまった。
だが実際の出勤は日に数人、たったひとりのときもあるという。
スタッフはゼロだ。
オーナーが一人で、電話も受けるしドライバーもする。
毎日事務所に寝泊まりしているらしい。

 

嫌がっていたWebだが、今はしぶしぶいくつかに広告を出している。
だがメールの問い合わせにはほとんど返事していない。
毎日店の業務に追われていると、メールが届いていることに気づくのはひと段落がつく明け方で、すでに着信から数時間経っているのがほとんどだ。
すっかり疲れてしまって返信する気力も起きないという。
見かねて俺が返信用の定型文を作ってみたが、それも使っていない。
最近はメールを開きすらしていない。

 

さすがにこれはマズいと思う。
このまま廃業になってしまうのか。

 

これまで風俗嬢が辞めたり、スタッフが飛んだり、店がつぶれるのを何度も見てきた。
だがあくまで広告代理店として、必要以上に店と深くかかわることは避けている。
そこまで責任は持てない。

 

だがつきあいが長いと情もわく。
それに俺の最初のクライアントだ。

 

そんなことを思っている間にオーナーは飛んでしまった。
事務所に行ったら引っ越ししていた。

 

電話はつながった。
ずっと休んでなかったからしばらく休むそうだ。
在籍していた女の子たちも希望者には知り合いの店を紹介したらしい。

 

自殺してなくてよかった。
“また店をするときはいつでも俺に相談してくださいよ”